手の甲に美容液をなじませて三十分後、もう一度、手を鼻に近づけてみてください。そこにあるのは、塗った瞬間に感じた香りとは少し別のものです。最初の明るさは退き、代わりに、肌の温度に溶けたような落ち着いた香りが残っています。
香りが時間とともに変わるのは、香水に親しんだ方にはなじみのある現象です。ただ、手の上でその移ろいを意識して辿る人は多くありません。手は顔のすぐ近くに来る部位であり、同時に、一日に何度も洗われる部位でもあるからです。
この記事では、香りがトップからベースへ移ろう仕組みを手の視点から確かめ、手の香りの時間が短い理由と、それを延ばす方法を考えます。最後に、Soie の5つの香りそれぞれの入口と余韻を一覧にしました。
トップ、ミドル、ベースという三つの時間
フレグランスは一般に、最初に立ち上がるトップノート、その後に中心となるミドルノート、最後まで肌に残るベースノートの三層で語られます。軽く揮発しやすい素材ほど早く香り立ち、重く揮発しにくい素材ほど長く残る。その速度の違いが、香りに時間の流れをつくります。
Soie の香りは、手に触れる瞬間の温度や湿度まで想定して調合され、トップからベースへと肌温とともに移ろうよう設計されています。手は体の中でも温度が変わりやすい部位です。冷えた朝の手と、温まった午後の手では、同じ香りでも立ち上がり方が違います。
塗った直後の香りだけで好き嫌いを決めるのは、物語の冒頭だけを読んで本を閉じるようなものです。少なくとも数十分、できれば半日、手の上での変化を追ってみると、その香りの本当の姿が見えてきます。
手は洗われる部位、香りの時間が短い理由
首筋や手首につけた香水は、半日近く変化を楽しめます。けれど手は違います。食事の前、帰宅後、料理の合間。手は一日に何度も洗われ、そのたびに香りも流れます。手の上の香りは、ベースノートに辿り着く前に、次の手洗いを迎えることが多いのです。
だからといって、手の香りを諦める必要はありません。手は顔の近くに来る回数が、体のどの部位より多い場所です。ページをめくる、カップを持つ、頬杖をつく。そのたびに香りが届く距離にあります。短い時間でも、届く回数は多い。それが手の香りの特徴です。
香りの時間が短いことは、裏を返せば、香りを選び直す機会が多いということでもあります。朝は軽やかに、夜は落ち着いて。手洗いのたびに香りを重ね直せるのは、手というキャンバスならではの自由です。
5つの香り、入口と余韻
Soie の5つの香りは、専属の調香師が世界各地から厳選した香料で創り上げたものです。香調の並びを、最初に立ち上がる入口と、最後まで残る余韻という二つの端から見ると、それぞれの性格がはっきりします。
- LUXURY FLORAL ベルガモットとマンダリンの明るい柑橘で始まり、ネロリとローズを経て、ベチバー、ムスク、アンバーの温かな余韻へ。
- ELEGANT TIME オスマンサス(キンモクセイ)にジンジャーとカルダモンのスパイスが重なって始まり、チュベローズとジャスミンを経て、サンダルウッド、ムスク、シダーウッドへ沈んでいきます。
- COLOR DROPS ライラックとウィステリア(藤)の透明な花で始まり、ローズとウォーターアコードを経て、サンダルウッド、ムスク、シダーウッドの静かな余韻へ。
- SUPREME TEA ローズマリー、ベルガモット、セージのハーブで始まり、い草と緑茶、紅茶を経て、アンバー、ムスク、モス、パチョリの深い余韻へ。
- SAKURA ホワイトラベンダーとグレープフルーツ、ライチのみずみずしさで始まり、サクラとマグノリア、ホワイトローズを経て、ムスクとシダーウッドの清らかな余韻へ。
入口が似ていても余韻が違う香り、入口は対照的でも余韻が近い香りがあることに気づかれると思います。たとえば COLOR DROPS と SAKURA は、どちらもムスクとシダーウッドで閉じますが、始まりはまったく別の景色です。
ソープと重ねて、香りの時間を延ばす
手の香りの時間を延ばす、いちばん自然な方法は、洗う段階から香りを始めることです。手洗いが香りを流す行為なら、その手洗い自体を香りの入口にしてしまえばよい。Soie のハンドソープと手の美容液が同じ5つの香りで揃えてあるのは、そのためです。
同じ香りのソープで洗うと、まず泡の中でトップノートが立ち上がります。すすいで拭き、美容液をなじませると、ソープが残したほのかな香りの上に、美容液の香りがもう一度トップから重なります。二つの層が時間差で進むので、手の上の香りはひとつの製品で楽しむより厚みを持ち、長く続きます。
別の香りを重ねて、自分だけの香り方を見つけることもできます。重ねづけの考え方は ソープとセラム、同じ香りを重ねる でも述べています。
Soie が香りを設計するときに考えていること
手の美容液エンライトハンドセラムとモイストフレグランスハンド&ボディソープの香りは、香水として成立する水準を目指して、専属の調香師が歳月をかけて創り上げました。香りの持つ感情への作用と、手肌に触れる心地よさとの調和を何度も確かめ、一滴ずつ組み上げています。
5つの香りの香調は 香りの紹介ページ にまとめています。次に美容液をなじませたら、塗った瞬間と、三十分後と、次に手を洗う直前。三度、手を鼻に近づけてみてください。そこに、その香りの一日があります。
